雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
そうだ。雨宮課長が迎えに来る前にお母さんと実家に帰ろう。怪我が治るまでは実家にいたいと甘えれば何とかなるかも。

「あの、お母さん」
「奈々子の事は拓海さんに任せておけば安心ね。奈々子が入院したって拓海さんから聞いて、明日からのオーストラリア旅行中止になるかと思ったわよ」
「オーストラリア旅行?」
「お正月に会った時言ったでしょ? お父さんとオーストラリア旅行をするって」

最近、お正月にお母さんに会った記憶がない……。

「奈々子、忘れちゃった? みんなで初詣に明治神宮にお参りしたじゃない」

初詣……。

明治神宮に最後に行った記憶は大学生の時だ。確か、当時付き合っていた成瀬君と二人だけでお参りに行った。

お母さんとお参りした記憶はない。

「みんなって、お母さんと私と……」
じっとお母さんを見ると、私の言葉を受け取って「お父さんと拓海さんの四人よ」と教えてくれる。

お父さんと雨宮課長まで一緒だなんて……。
家族ぐるみの付き合いをしていたって事?

「従妹のまどかちゃん、赤ちゃんが生まれたって、その時、話したでしょ?」

まどかちゃん……。
私より三歳年下で、結婚してオーストラリアに住んでいる事は覚えている。

あのまどかちゃんが子どもを産んだのはびっくり。

「まどかちゃんに会いにオーストラリアに?」
「そう! お母さん、初めての海外旅行だから、もう楽しみで!」

それからお母さんのオーストラリアの話になる。シドニーでショッピングをするとか、コアラとカンガルーと触れ合える動物園に行くとか、エアーズロックを見るとか、まどかちゃんに会いに行くと言いながらも、一番は観光目的のようなスケジュール。

「お母さん、水着を持って行こうか迷っているのよね。向こうは夏らしいから。海に入るのもいいでしょ?」

み、水着!
お母さん、元気過ぎる。

「はしゃぎ過ぎて人の迷惑にならないようにしてよ」
「大丈夫よ」

こんなに楽しそうに話されては、オーストラリア旅行を延期して欲しいとは言えない。

実家には帰れないか……。
< 310 / 373 >

この作品をシェア

pagetop