雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「やっぱりやめておこう」

桃子がもったいぶるように赤く輝くキールに口をつけた。

「えっ、教えてよ。気になる」
「聞きたい?」

桃子がにっこり微笑む。

「うん。聞きたい」
「じゃあ、耳貸して」

桃子に言われて耳を寄せる。

「偶に、うなじにキスマークつけて会社に来てたよ」

椅子から転げ落ちそうになった。

き、キスマーク!

「奈々子、後ろだから見えてなかったんだろうね。あれは雨宮課長がマーキングしてたんだと思うけど」

クスクスと桃子が楽しそうに笑う。
キスマークだなんて……。

桃子が気づいていたって事は他の人も……。

「本当、雨宮課長に溺愛されているって感じだったよ。そう言えば記憶がなくなった後にエッチってした?」

きゃー。聞かないで―!

耳を塞ぎたい。
桃子の質問が大人過ぎてついていけない。

「その様子だとなさそうね。大丈夫かな。雨宮課長。きっと毎晩してたんでしょ?」

えっ、毎晩!

「奈々子は雨宮課長が欲しくならないの?」

欲しいと言われて、カアッと体の奥が熱くなる。
雨宮課長を欲しくなるだなんて刺激的な事を言わないで欲しい。考えただけで赤面して、落ち着かない気持ちになるんだから。

「もう、からかわないでよ。今言った事、嘘でしょ?」
「どうかな」

桃子がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

こんな事で動揺している場合じゃない。今日は桃子に聞きたい事があったんだ。

「ねえ、知っていたら教えて欲しいんだけど、私から雨宮課長を好きになったの?」

意地悪く微笑んでいた桃子が急に優しい目をする。
「そうね」と先ほどよりも、少しトーンを落とした声で桃子が話すのを、じっと聞いた。
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