だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「…………我の放った呪いの種の所為でこの美しい国が滅びかけたと聞いた。故意ではなかったと言えど、我の所為である事には変わりない。その恨みも憎しみも、甘んじて受け入れてやるのじゃ」

 ナトラがオセロマイト王に語りかけると、それに王はピクリと反応した。オセロマイト王はやるせない表情でナトラを見つめた。
 長い、とても長い一分だった。その後オセロマイト王が深く息を吐き、口を切った。

「……余達はつい先程まで草死病《そうしびょう》を未知の病としていた。だからこそ、突然呪いだの竜だの言われても実感も湧かぬ……故に、聞かなかった事にする(・・・・・・・・・・・)。余は…草死病《そうしびょう》の原因をアミレス王女殿下が排してくれた事しか知らぬ」
「オセロマイト王……」
「その少女が何者だろうと、我々の与り知らぬ所よな」

 オセロマイト王はそう言い切った。これはきっと彼にとっても苦しい選択であっただろうに……こんな風に配慮して貰えるだなんて。
 もしもの時は私の手首足首で手打ちにしてくれって言うつもりだったのに、オセロマイト王がとても寛容な人で良かった。

「この国はとても綺麗じゃ。我も……白の姉上も赤の兄上も青の兄上も認めた美しき自然の国じゃ。確かな不幸だったのじゃろう、我がこうして話す権利もないような悲劇だったのじゃろう。だがそれだけ──緑の竜に侵される程に美しき国だったのだと誇れ。我から言えるのは、これだけじゃ」

 複雑な感情に表情を歪めていたオセロマイト王に向け、ナトラは雄弁に語った。
 その言葉にオセロマイト王が俯いた時ナトラが私の服を引っ張って、

「アミレス、また魔力を分けてくれぬか」

 と小声で頼んで来た。何をするつもりなんだろうと思いつつ、私は残る魔力の半分近くをナトラに分けてあげた。
 私の魔力を受け取ったナトラは、祈るように両手を合わせた。程なくしてその手元から黄金の輝きが溢れ出す。

「……黄金の種。幸福を齎す願いの樹。運命を知らせる花。死者を弔い生者を慈しむ実。富を生み育む根。いつか聞いた事があるじゃろう──伝説と呼ばれる世界樹の種。それを、お前にやろう」

 誰もが目を見張る中、ナトラは黄金に輝く一粒の大きな種をオセロマイト王に渡した。
 それは古くから伝わる御伽噺にある伝説の種。それをまさか目の当たりにする日が来るなんて。
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