だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「それならお前は魔法の特訓を増やすべきだぜ、マクベスタ。剣の腕前なら既にいい線行ってんだ、若い内に魔法に慣れといた方が後が楽だと思うぞ?」

 汗を拭うマクベスタに向けて、エンヴィーさんがそうやって助言する。エンヴィーさんの言う通り、マクベスタは既に十四歳とは思えない程の剣の実力を持つ。
 元々マクベスタには天賦の才があって、それをエンヴィーさんという、精霊界でも一二を争う剣の腕前をお持ちだという方が師匠としてその才を伸ばしたのだ。
 そりゃあ、相当な実力となるに決まっている。
 そして魔法に関してだが、魔法は魔力があれば誰でも使えるのだが……魔法を武器に戦うのなら幼い頃から魔法を使い、慣れておいた方がいいのだとか。
 魔力が一気に無くなる感覚に慣れる必要があるし、魔力の精密な操作は感受性の高い子供の方が得意とまで言われている。その為この世界では、魔法を扱う職につきたい者は幼い頃から魔法に慣れておく必要があるとされているのだ。
 私はそもそもが魔導師志望なので、勿論六歳の頃から魔法に触れて来たが……マクベスタの魔力が亜種属性の中でも規模が大きい魔法である事と、剣を振る事が好きだったという事が重なり、あまり魔法を扱って来なかったのだとか。
 まぁ、確かに魔法に満ちた世界だとは言えども魔法をあまり使わない人は一定数いる。魔力量が少なかったり、普段使いの難しい魔法だったり、理由は様々だ。
 マクベスタもその内の一人だったというだけの話だ。……しかし、私としては彼にも是非魔法を扱えるようになって欲しいと思っている。
 だって、彼の魔力は……。

「そうよ、マクベスタ。雷属性なんて亜種属性の中でもかなり珍しい魔力じゃない! 剣を帯電させて戦ったりしたら、その剣に何かが触れた瞬間敵は一気に感電してしまいには…………もう最強じゃないかしら? 私が雷属性だったら絶対やってたわ」

 興奮気味にまくし立てる私にマクベスタは眉尻を下げて、

「お前は本当に魔法が好きだな。雷なんてもの、普通の淑女なら怯えて当然なのに……お前だけだ。嬉々として雷を落とせだの剣に纏わせろだの言い出すのは」

 何処か楽しそうに微笑んだ。……ゲームの時よりも若いからかもしれないのだけれど、このマクベスタ、たまにだけど普通に笑うのよね。ゲームでは全然笑わなかったのに。
 真面目で無愛想な純粋男子……それがマクベスタなのだけれど、無愛想では無いのよね。

「きゃーっ、怖いー! って言った方がいいなら言うけれど。淑女の悲鳴、欲しい?」
「要らん。それにお前がそんな風に叫んでいる様子は想像がつかない」

 マクベスタは顔の前で手を左右に振り、私の悲鳴を受け取り拒否した。更に何ともまぁ失礼な事を言ってきたものだ。
 まぁ、事実だけれど。何と言いますか……きゃあああっ! なんて悲鳴は出ないのよね。咄嗟に出てもうわっ、とかえっ、とかで。
 女の子らしい悲鳴が出せないんですよ……ごめんよアミレス……どんどん淑女らしさからかけ離れていっているわ。
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