だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
(確かにシュヴァルツの言う通りだ。一国の城に展開される結界を無視して物体の転移を可能にする人間など、そう滅多にいてはならない。ならば本当にあの時のあの声の主が、王女殿下と謎の暗号でやり取りを……!!)

 七回に及ぶ会議の果てにその手紙が正規のルートで送られる物では無い事、そして偶然にもシルフが、アミレスが『カイル』と知らぬ男の名を口にした所を聞いた為に行き着いた答え。
 アミレスが一切面識の無い筈の他国の王子と暗号を使ってまで頻繁に手紙のやり取りをしている──その事実が、非常に厄介な重しとなって彼等にのしかかるのだ。

「まァ、この際姫さんが俺達も知らねぇ男と手紙のやり取りをしてた事は置いといて」
「置いとける訳ないだろふざけてるのかお前」
「一旦! 一旦置いとくだけっすから! 睨まないでくれませんかねシルフさぁん!!」

 エンヴィーの発言が気に食わなかったのかシルフが凄む。すると、エンヴィーはおどおどしながら言葉を訂正した。やはり上下関係がハッキリしている。

「とりあえずだ、問題なのはこれがもし世間やら姫さんを目の敵にする奴等にバレた時だ。間違いなくこれは国際問題に発展する。それも…………他国と内通した裏切り者とか、そんな感じで大騒ぎになるだろうな」

 エンヴィーが自身の意見を述べた時。イリオーデの心臓が大きく、強く鼓動した。

(裏切り者……っ)

 その言葉に、ビリビリと、全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。強制的に再演《フラッシュバック》される、あの、悪夢──。

「姫様が裏切り者などと呼ばれていい筈が無い!!」

 ドンッ! と机を思い切り叩いてハイラが立ち上がった。珍しく平静を失い、何かに追いつめられるような緊迫した表情で、彼女は叫んだ。
 その姿に普段のハイラを知る者達は目を丸くした。衝動的に叫んでしまったハイラはハッとなり、「……取り乱してしまいました」と小さく呟きながら今一度着席する。

「じゃが、傍から見ればそう見えてしまうのも頷ける。せめてその内容ぐらい教えてくれればのぅ……我等とて、何かしら動けたやもしれぬのに」
「ぼく達も判断しかねてるからね、今は……」

 ナトラとシュヴァルツが子供らしい容姿に似つかわしくない深いため息を吐くと、それにシルフが反応する。
< 561 / 1,121 >

この作品をシェア

pagetop