だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「先日私が『早めに後継者を決めておいてくれないと出来る取引も出来なくなる』と少し話を誘導しただけで、ララルス侯爵が後継者には社交界でも引く程の屑野郎と有名な長男を指名した。それにより、ララルス侯爵の愚かさは更に際立ったとも。近頃の社交界はこの話題で持ち切りだ」

 シャンパージュ伯爵はこの数ヶ月間のうちの様々な下準備を行って下さっていた。そのうちの一つが、ララルス侯爵家の後継者についてです。
 あの屑が無駄に健康な所為もあって、ララルス侯爵家は一向に後継者を定めようとしなかった。どうやら自分以外の者に権力が渡るのを恐れていたらしい。

 しかしシャンパージュ伯爵から少し言われただけで、あっさりと後継者を決めたようです。侯爵のような立場が相応しくない小物っぷりですね、相変わらず。
 八年前の記憶と変わりない愚かな男に、私はとにかく呆れ返る。すると、シャンパージュ伯爵が思い出したように口を切った。

「ああそうだ。そう言えば知ってるかい? この前その長男が何処ぞの令嬢を慰み者にした挙句孕ませたのに認知しようとしてないそうだ。彼にまつわるこの手の話はこれでもう七回目さ」

 珈琲を味わいつつ、とても気分が悪くなる話を始めるシャンパージュ伯爵。どうしてそのような話をわざわざするのですか、と一瞬彼を睨んでしまった。
 腹の底で煮えくり返る、いつか見た下卑た顔に対する果てしない嫌悪。怒りや憎しみなどではなく、この体にアレと同じ血が流れている事が嫌で嫌で仕方無い。改めて、そう思いました。

「……八年経ってもあの屑は変わらないのですね。世間一般的に父や兄や姉にあたるあの人達は、私の人生における数少ない汚点なのです。世が世ならとっくに全員始末していたぐらいですよ」

 あんなものは人類にとっての損失に他ならないので。と付け加えると、シャンパージュ伯爵が「損失か」と苦笑いして、

「天下のララルス侯爵家の有望株がそう言うのなら、外野の私が思う以上の損失なのだろう。それなら早急に排しておくべきだね、我が市場を守る為にも」

 珈琲片手に爽やかな顔でサラリと述べる。
 この後、更にララルス侯爵家の汚物の話を沢山聞かされまして……あの屑だけに限らず全員顔面を一発殴ってやろうかと思い始めてしまいました。
 朝食と軽い打ち合わせを終えた私達は喫茶店を出て、シャンパージュ伯爵の用意した馬車に乗り込みました。
< 711 / 1,093 >

この作品をシェア

pagetop