だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「レオ、お前……帝都に行った事はあるか?」
「え? いや、無いけど。だって、ずっと伯父様の手伝いしてたか──」
「そうだろう無いだろう!」
「……急に何、その元気の良さ……」

 やたらと食い気味に声を張り上げるログバードに、レオナードは引き気味に眉を顰めた。
 しかしログバードは甥の言葉など全く気にせず思いのままに話を進めた。

「帝都はな、いい所だ。ワシには分からんが……まあ若いお前ならきっと楽しめる事だろう」
「あのー。話が見えないんだけど」
「ハッハッハッ、みなまで言わせるでない。お前とて、実はもう時期的(・・・)に見当がついているのだろう?」

 ログバードが不健康な顔に鋭くニヤリとした笑みを浮かべると、レオナードは「まぁ……」と曖昧な反応を返した。

「来月の三月に皇太子の十五歳の誕生パーティーが帝都の王城で行われる。ワシ行きたくないからお前が代わりに行け」

 何ともめちゃくちゃな命令である。しかしレオナードはこれを推測していた。先程のログバードの言葉通り、この呼び出しの理由については八割方見当はついていたのだ。
 なので特に驚く事も無く、

(まぁ、そうだよね。そんな気はしてた……伯父様なら絶対嫌がるだろうなって思ってたよ。それで俺に白羽の矢が立つのは少しだけ予想外だけど。てっきり父さんに押し付けるかと思ってた)

 淡々とこの状況を受け入れていた。
 ログバード相手に下手な抵抗や文句は無意味であると、彼の元で育って来たレオナードはきちんと理解しているのである。

「それは良いんだけど、どうして俺なの? 父さんじゃあなくて」
「セレアードは領主引き継ぎの件でこれから色々と忙しくなる予定だからな。あまり長々と領地を離れさせる訳にもいかないのだ」
「成程……それで俺が名代って事になったんだね。でもそれ、偉い人に怒られないのかなぁ」

 皇太子の十五歳の誕生パーティー。それは帝国で一二を争う重大イベント。特に有力家門は出席必須だというのに、テンディジェル家は当主も次期当主も欠席し、若者に名代を務めさせようとしている。

 これは確かに、国の重鎮として些か軽率な行動であり場合によっては咎められる恐れすらもある行動。果たしてこれをエリドルやケイリオルや他の有力家門の者達が許すのか……と、レオナードは不安を覚えているのだ。
 そんな不安を吹き飛ばさんとばかりにログバードが豪快に笑う。
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