真夏の夜の夢子ちゃん
「パパー!早くー。」
突然聞こえた子供の声に驚いて、洸平は彼女から体を離した。
石灯籠の近くで、5歳くらいの小さな男の子がこちらを見ている。
不思議そうな顔をして、洸平を見たまま動かない。
綿あめや何とかレンジャーのお面やおもちゃの銃などを腕いっぱいに抱えている。屋台で買ってもらったのだろう。
…何だよ。邪魔すんなよ。
横にいる彼女の腰に手を回して、自分の方に抱き寄せる。
今、取り込み中なんだよ。早く行けよ。
洸平は男の子を睨みつけた。
それでも男の子は視線をそらさない。
「おーい、先に行くなよー。」
男の子の父親らしき男性が小走りで駆け寄ってきた。
洸平に気づいて、少し頭を下げる。
「ほら、帰るぞ。ママが待ってる。」
男の子は父親に手を引かれながら、神社の裏口に続く道へと消えていった。
何度も洸平の方を振り返りながら。
…毒気を抜かれてしまった。
せっかくキスに浸っていたのに。
洸平と彼女は、目を見合わせて笑った。彼女もきっと同じことを考えているのだろうと思った。
溶けたキャラメルと洸平の唾液のせいでベタベタになってしまった唇を、指でそっと拭っている彼女の仕草がかわいい。
「あー、喉乾いた。飲み物買ってくるよ。」
洸平は立ち上がった。
「すぐ戻るから待ってて。」
彼女が「うん」と頷く。
確かラムネを売っている屋台があったような。洸平は、彼女をその場に残して神社の表へ回った。
とても幸せな気分だ。
彼女との距離が、また少し縮まったようで嬉しい。
戻ったら名前を聞こう。
連絡先も。
…告白、してもいいかな。
もし彼氏とかいないなら、つきあってくれるかな。
気持ちが高ぶって、顔がニヤける。
ラムネ屋のオヤジに変な目で見られたが、関係ない。冷たいラムネで頬の熱を冷ましながら、彼女の元へと急いだ。
しかし洸平は、またしても呆然とする。
先程まで2人が座っていた場所には誰もいなかったのだ。辺りを見回しても、彼女の姿はない。名前を呼ぼうとしたが、名前を知らないからできない。
「マジか…。」
正直、またこうなるのではないかという思いも、心のどこかでなかったわけではない。
彼女は今まで何回も、急にいなくなった。名前も聞けず、次に会う約束もできないまま、いなくなってしまう。
しかし、あんな目で見つめてきて、あんなキスまでしたのだから、今回こそはずっと一緒にいられるのではないかという期待の方が大きかった。
待ってるって頷いてたのに。
「…なんで。」
洸平はラムネの瓶を手に持ったまま、しばらくの間立ち尽くした。
祭りは3日間行われると聞いたので、次の日の夜もその次の日の夜も、洸平は神社を訪れた。
もはやあの子に会えるとは思っていなかった。これまでも会えたことなどなかったのだから。
それでも、賑わう人々の間にあの子の姿を探してしまう。
自分の行動が普通でないことはわかっている。こんなふうになってしまった自分が不思議でならない。
あの子のことが好きだ。
どうしようもないくらい。
突然聞こえた子供の声に驚いて、洸平は彼女から体を離した。
石灯籠の近くで、5歳くらいの小さな男の子がこちらを見ている。
不思議そうな顔をして、洸平を見たまま動かない。
綿あめや何とかレンジャーのお面やおもちゃの銃などを腕いっぱいに抱えている。屋台で買ってもらったのだろう。
…何だよ。邪魔すんなよ。
横にいる彼女の腰に手を回して、自分の方に抱き寄せる。
今、取り込み中なんだよ。早く行けよ。
洸平は男の子を睨みつけた。
それでも男の子は視線をそらさない。
「おーい、先に行くなよー。」
男の子の父親らしき男性が小走りで駆け寄ってきた。
洸平に気づいて、少し頭を下げる。
「ほら、帰るぞ。ママが待ってる。」
男の子は父親に手を引かれながら、神社の裏口に続く道へと消えていった。
何度も洸平の方を振り返りながら。
…毒気を抜かれてしまった。
せっかくキスに浸っていたのに。
洸平と彼女は、目を見合わせて笑った。彼女もきっと同じことを考えているのだろうと思った。
溶けたキャラメルと洸平の唾液のせいでベタベタになってしまった唇を、指でそっと拭っている彼女の仕草がかわいい。
「あー、喉乾いた。飲み物買ってくるよ。」
洸平は立ち上がった。
「すぐ戻るから待ってて。」
彼女が「うん」と頷く。
確かラムネを売っている屋台があったような。洸平は、彼女をその場に残して神社の表へ回った。
とても幸せな気分だ。
彼女との距離が、また少し縮まったようで嬉しい。
戻ったら名前を聞こう。
連絡先も。
…告白、してもいいかな。
もし彼氏とかいないなら、つきあってくれるかな。
気持ちが高ぶって、顔がニヤける。
ラムネ屋のオヤジに変な目で見られたが、関係ない。冷たいラムネで頬の熱を冷ましながら、彼女の元へと急いだ。
しかし洸平は、またしても呆然とする。
先程まで2人が座っていた場所には誰もいなかったのだ。辺りを見回しても、彼女の姿はない。名前を呼ぼうとしたが、名前を知らないからできない。
「マジか…。」
正直、またこうなるのではないかという思いも、心のどこかでなかったわけではない。
彼女は今まで何回も、急にいなくなった。名前も聞けず、次に会う約束もできないまま、いなくなってしまう。
しかし、あんな目で見つめてきて、あんなキスまでしたのだから、今回こそはずっと一緒にいられるのではないかという期待の方が大きかった。
待ってるって頷いてたのに。
「…なんで。」
洸平はラムネの瓶を手に持ったまま、しばらくの間立ち尽くした。
祭りは3日間行われると聞いたので、次の日の夜もその次の日の夜も、洸平は神社を訪れた。
もはやあの子に会えるとは思っていなかった。これまでも会えたことなどなかったのだから。
それでも、賑わう人々の間にあの子の姿を探してしまう。
自分の行動が普通でないことはわかっている。こんなふうになってしまった自分が不思議でならない。
あの子のことが好きだ。
どうしようもないくらい。


