大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
カーテン越しの薄明りで、瞬は明け方に覚醒した。
(夜明けか……)
まだ身にはなにも着けていない。もちろん横で眠っている詩織もだ。
全身が気怠いが、心は凪いでいた。
昨日、詩織と出会った時に感じた焦燥感はどこにもない。
(そうだ。初めて会った時から詩織とは心も身体もひとつになりたかったんだ)
その気持ちを詩織も感じていたはずだ。だから受け入れてくれたと信じたい。
ひと晩中、無我夢中で詩織と抱き合ってしまった。
お互いに言葉もなく、ただ情熱のおもむくままに触れあった豊かな時間だった。
疲れ果てたのか、詩織はまだ深く眠っている。
整っているが、優し気な顔立ちだ。
頬はうっすらとピンク色で、白い首筋から胸元にかけていくつもの赤い印が刻まれていた。
(詩織が側にいてくれたら)
自分がこれまで持つことが叶わなかった、穏やかな家庭が築けるのではないだろうか。
気軽に話せて、笑いあえる家族。
母を亡くしてから、心の隅に押しやっていた平凡な幸せへのあこがれ。
それを詩織が再び蘇らせてくれたのだ。
だが、厄介なこともある。
詩織が彩絵の実の妹だということだ。
このところ、瞬は彩絵の扱いに困っていた。
父やスタッフからの希望と広告代理店からの推薦で新車のイメージキャラクターに彩絵をあてたはずだ。
だが、いつの間にか彩絵は瞬が希望したと信じている。