大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
***
「う……ん」
柔らかな布団と背に当たる硬いものに違和感を感じて目が覚めた。
「目が覚めたか?」
背後から聞こえる瞬の声に、はっと意識が戻った。ここは瞬の家だ。
そして瞬のベッドにふたりして横たわっていて、自分の背中に触れているものは瞬の胸筋だと気がついた。
「は、はい……」
詩織は、こんな時なんて言えばいいのか浮かんでこない。
一夜を過ごしたあとの気の利いたセリフなんて、使ったことがないのだ。
「シャワーを浴びるといい」
ゆっくりと身体を起こそうとした詩織は、自分がなにも身に着けていないことに気がついた。
「あ!」
慌てる詩織を瞬は軽々と抱き上げた。
そのままバスルームに連れていかれる。
「は、恥ずかしいので、下ろしてください」
「生憎だったな。俺もシャワーを浴びたいんだ」
広いバスルームに入ってからやっと下ろされた。
ぬるめのシャワーをふたりで浴びながら戯れる。
「もう、沖田さんやめて」
これ以上は恥ずかしすぎて耐えられないと詩織が言っても、瞬は聞いてくれない。
「身体は大丈夫か?」
「ええ」
昨夜のことを聞かれたと思うと、詩織はいたたまれなくなる。
(会ってまだ数ヶ月なのに、こんなことに……)
自分でも信じられないくらい、大胆な一夜を過ごしてしまった。
これほどの情熱が自分の身体の中にあったなんて驚くばかりだ。
前の恋人と過ごした夜はなんだったのだろうかと思うくらい、初めて我を忘れてしまったのだ。