大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
髪まで洗ってからバスルームを出て、ふたりでドライヤーで乾かし合った。
恥ずかしさを通りこすと、隠そうとする方がいやらしくてバカみたいな気分になってきた。
すると、なんだか瞬の前で自然に振舞えるようになってくる。
「コーヒー飲むか?」
「あ、私が淹れましょうか?」
「ああ、頼む」
この前食事した時にキッチンの中は把握していたから、迷わずに準備ができた。
「お砂糖とミルクは?」
「朝はブラックで」
バスローブのまま、瞬はダイニングに腰掛けてじっと詩織を見つめている。
詩織は瞬のスエットの上下を着ているが、袖もズボンもくるくる折っていて酷い格好だ。
「あんまり見ないでください。素顔だし」
「可愛いよ」
「イヤだ……」
確かに瞬より五歳年下だから幼く見えるのかもしれないが『可愛い』なんて誰からも言われた記憶がない。
「可愛いなんて、初めて言われました」
「そうか? 彩絵はいつも言っているよ」
ガチャンと派手な音を立ててしまった。カップを持ちかけていたのに、指が震えてしまったのだ。
食器は無事だったが、弾んでいた気持ちはどこかにいってしまった。
「彩絵が?」
「ああ、仲よさそうだな」
「はい、どうぞ」
瞬の前に、マグカップを置く。
「あの……彩絵とは……」
朝からする話ではないかもしれないが、つい聞いてしまった。
瞬がなんて答えるのか、ドキドキしながら詩織は瞬の向かいの席に座る。