大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
拓斗が連絡をとった相手は幼なじみの警察官らしい。
瞬とも顔なじみで、以前ヤンチャだった頃からの付き合いだから事情を話すとすぐに力を貸してくれた。
県警に勤めているから都内の情報を確認するのに少し時間がかかったが、搬送先を教えてくれた。
詩織と拓斗は急いで救急病院へ向かった。
「友人の話だと、命は助かったけど安心はできないらしいんだ」
「そんな!」
あちこち骨折して内臓も痛めており、かなり重症だと聞かされていた。
「こんな気持ち、二度も味わうなんて……」
運転しながら拓斗は悔しそうだ。
五年前のレース中の事故はクラッシュした車を避けられずに巻き込まれたものだったし、今回はスピードを出し過ぎていたトラックがスリップしてセンターラインを越えてきた事故のようだ。
運転技術のある瞬だから咄嗟に避けられたが、もし慣れないドライバーだったらどうなっていたかわからない。
詩織は助手席に両手を組んで座っていた。
無意識のうちに祈るようなポーズをとっていたのだ。
(瞬さん、瞬さん……)
心の中で恋しい人の名前を呼び続ける。
生きていると聞かされてはいたが、会うまでは安心できない。
ただ命があることだけを感謝して、少しでもケガが軽いことを願い続けていた。