大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
瞬が搬送された救急病院は都内でも大きな病院で、設備も整っていることで有名だ。
病院の周りには事故に遭ったのは沖田自工の御曹司だとマスコミに漏れたせいか、もうカメラマンやレポーターの姿が見られる。
駐車場や入り口付近に警備員の姿が多く見られるので物々しい雰囲気だ。
受付に行って、拓斗が様子を尋ねると家族でないから教えられないと言われてしまう。
仕方なく待合室あたりを歩いていたら、たまたま瞬の義母がエレベーターから下りてきた。
売店を探しているのかキョロキョロとしている。
「おばさん!」
「あ、拓斗さん」
瞬の義母というには、ずいぶん若くて華奢な女性だった。
身なりはきちんとしているが髪は乱れているし顔色は青ざめている。
「来てくれたのね……」
潤んだ目で拓斗に声をかけている。
瞬とは幼なじみの拓斗の姿を見て、気が緩んだのかもしれない。
「手術はまだ終わってないんですか?」
「ええ、時間がかかりそうなの。主人がコーヒーが欲しいっていうものだから」
「じゃあ、僕たちが買って待っていきますよ」
拓斗はとっさに義母に申し出た。