ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
「約束だよ。フロランタン、いっぱい、いっぱい焼いてくれる?」

 いっぱい、と両手を大きく広げバタバタとさせているのは、山のようにと言いたいらしい。

「オーブンの天板三枚分焼いてあげるよ!」
「それはちょっと多すぎるわ」
「いいじゃないか、残りは持って帰れば」

 思わず横から口を挟んだけれど、マルは気にしていない。たしかに、天板三枚分焼いても、三枚分一度に食べる必要はない。お土産に持たせてやろうか、と考える。

「シアお姉様とマルのお菓子はおいしいから、母上のところにも届けられたらいいのに」

 ぽつりとアンセルムが口にして、その場の空気が凍りついた。
 アンセルムには、イリア元王太后の罪については教えていない。病気が悪化したため、空気のいいところで療養しているというのがアンセルムに伝えられたこと。
 王宮で働いている者達も大半はそう信じているはずだ。
 辺境の地で、幽閉されていることを知っているのはほんの一握り。ごく限られた者――エドの信頼を得ている家臣とシア、マルだけである。

(そうよね、まだ母親が恋しいわよね……)

< 161 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop