離婚前提から 始まる恋
大きな会社の取締役なら、一度に多くの事業にかかわるのも当然のこと。
新規事業と、建設中の建物に起きる突発的な事柄。
もちろん今回のようにリコールやトラブル処理に駆り出されることだってあるだろう。
重たい仕事だな。
だからこそ、勇人を一番に考えてあげられる人が側にいるべきだと思う。
それは、私ではないのかもしれない。

「あれ花音、どうしたの?」
「え?」

いきなり杏に呼ばれ、足が止まった。
ボーッとエレベーターに乗ってしまった私は、気が付いたら下の階まで下りてきてしまったらしい。

「元気がないわね」
「そんなことないよ」

本当はクタクタ。
でもそれを口にすることはできない。

「久しぶりに今晩食事でもどう?」
「うぅーん・・・」

勇人は今夜も遅くなるって言っていたから、1人で夕飯を済ませるつもりだった。
でもなあ・・・

「このあいだ拓馬君と飲んだんでしょ?その話を聞かせなさいよ」
「ああ、それは・・・って、何で杏が知っているの?」
「拓馬君が花音のことを心配して連絡してきたのよ。とりあえず話は聞くから、ご飯に行きましょう?」

拓馬君のことは私も気になっていたけれど、連絡先の交換もしていないからどうしようもなくて困っていた。

「わかったわ」

仕事が大変な勇人には申し訳ないと思いながら、私は杏と食事に行くことにした。
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