離婚前提から 始まる恋
それからしばらく、にらみ合いが続いた。
里佳子さんも男性も言葉を発することなく、視線だけがぶつかっていた。

「舟木社長」
どのくらいの時間が経っただろう、それまで黙っていた勇人が静かに口を開いた。
「明日の午後に30分ほど時間をとります。スケジュールの都合で何時になるかはわかりませんが、それまで待っていただけますか?」
「わかりました」

「お話は聞きますが、こちらとしてもなんだかの改善が見られなければ、状況は変わりません」
「はい、わかっております。納得していただける改善策を提示させていただきます」
「わかりました。詳しいことは後程田口から連絡させますので」
「ありがとうございます」

何度も何度も頭を下げて会場を出ていく男性。
どうやら大きな騒ぎにはなることなく収まったみたいね。

「・・・狭さん。・・・若狭さん」

え?

勇人に気をとられていた私は、尊人さんに呼ばれていることに気が付かなかった。
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