離婚前提から 始まる恋
いい年をした大人が、何の警戒心もなくこんな時間まで一緒にいたのが一番悪いんだと思う。
言葉の端々や態度から、拓馬君にとって私は話しかけやすい存在なのだろうと理解していた。
でもそれは異性としてではなく、友人としてのものだと思っていたからこそ今日も一緒に飲んだ。
それが・・・

「まさか、気づいてなかったわけではないですよね?」
「だって、そんな・・・」

恋愛経験皆無の私に好意を持っていることを察しろなんて、無茶に決まっている。
それに、私が既婚者なのは拓馬君だって知っているはず。

「まあ、花音さんの反応からもしかしてとは思っていましたが・・・よくこれで結婚できましたね」
「失礼ね」
いくらなんでも、拓馬君にそこまで言われる筋合いはない。

「すみません。でも、覚えておいてください。僕は本気で、」

真っすぐに私だけを見る拓馬君の眼差しが強すぎて、私は後ろに一歩足を引いた。
その時、

「あ、危ない」

ちょうどそこには歩道と車道の段差があって、私はよろけてしまい、反射的に拓馬君が私の腕を引いてくれて、そのまま拓馬君の腕の中に引き寄せられた。
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