離婚前提から 始まる恋
「勇人、昨日はごめんなさい」
もう一度寝返りを打ち俺の方を見た花音。

「もういいんだ」

昨夜の男はサークルの仲間で、酔っぱらった花音を送って来ただけ。
偶然よろけたところを助けられ、その場面に俺が登場した。
夜のうちに花音から受けた説明で一応納得もしている。

「もう二度と外でお酒は飲まないから」

それでもなお落ち込んで反省の弁を述べる花音がとてもかわいい。
問題はそこではなくて、お前がかわいすぎることと、男に対する警戒心がないことだぞ。と言いたいのを押さえるのに必死だ。

「飲みに行くなとは言わないから、出かける時には知らせてくれ。必ず迎えに行くから」
「・・・はい」

こうして手の中でくるくると変わっていく表情を見ていると、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
離婚なんてせずにいられたら、どんなに幸せだろう。
あまりにも花音が愛おしくてつい欲が出そうになるが、それはダメだ。
花音は親に言われて俺と結婚しただけ。
このまま俺といれば、親の言いなりになって人生を決めてしまったことにいつか後悔する日が来る。
だから俺は、花音を自由にしてやるんだ。
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