国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています


「オリヴィア。人生をあきらめるな。お前は公爵令嬢だぞ」

久しぶりにやってきた兄のブラッドリーは最初から喧嘩口調だった。

「ノックスの名に何の意味があるのです?もう今は犯罪者同然としてカルトナーではノックスの名を聞くだけで石を投げられるというではありませんか。お兄様もスタンフィールドに名をあらためなさいませ」

「オリヴィア。だが…」

「わたしはノアがいれば幸せです。この子が幸せになれればそれで」

この日はノアの誕生日で、オリヴィアは仕事を休んでおりブラッドリーはノアのためにゴムでできた赤ちゃんの頭の大きさ位の遊戯用の球を持ってきてくれていた。これを蹴ったり投げたりして遊ぶ。オリヴィアも小さいころ、ブラッドリーとアドルフとともに遊んだものだ。

外は冬の冷たい雨が降っており、狭い部屋の中でその球をポイっと壁にあててあそんでいる。

「おまえにはまだいい縁談を見つけてやれる」

「いりません!」

つい口調がキツクなる。

もうコリゴリだ。
恋愛?結婚?
そんなものくそくらえだ。

あんなに信じていた人に裏切られたのに、もう結婚などしたくもない。
< 9 / 195 >

この作品をシェア

pagetop