罪と愛
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        ー小鳥遊 真sideー



『……そう。そんなに私を抱きたかったの』



否定はしない。

ずっと先輩が欲しかった。

俺だけを向いて欲しかった。
 
他の男に許した分まで,先輩の全部が欲しい。

だから,何も言わない。

変わりにまた,先輩の肌にキスを落としてみると。

先輩は小さく,声を漏らした。



「先輩,12時ですね。帰らなくて,良いんですか?」

「帰してくれるの? それに,こんな淫らなシンデレラは嫌よ,私。童話の癖に夢がない」

「やっぱ。可愛いです,先輩」

「あなたはいつまで経っても変ね」



手は,止めること無く。

こんこんと会話をする。

静かな部屋に,それを邪魔する物音はない。
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