エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
出会いから二年経ち、清貴は大学を卒業し菜摘は三年生になっていた。
九月からの留学に向けて八月の頭にはふたりして留学をする予定だった。同じゼミに在籍していたふたりを、定年間近の教授はかわいがってくれていた。
七月の半ば――久しぶりに大学に来た清貴と一緒に、教授に挨拶を済ませた菜摘の元に従兄弟の賢哉から電話があったのは、夕方で今からふたりで食事に行こうと話をしているときだった。
家に帰ったら顔を合わせるので、普段はメッセージのやりとりがほとんどだった緊急を要すると思い断りを入れて電話にでる。
「賢哉くん、どうしたの?」
『菜摘、落ち着いて聞いてくれ』
いつもなら「今いいか?」などこちらを気遣う言葉から会話が始まることが多いのに、それを飛ばすほど緊急事態らしい。なんとなく嫌な予感がした菜摘はスマートフォンをぎゅっと握り、先を促した。
『実は親父が――親父が菜摘の金に手を出したんだ』
「え、私のって……」
『菜摘の留学費用すべて使い込んだ。本当にすまない、俺どうやって謝ったらいいのかわからな――』
菜摘の手からスマートフォンが滑り落ちて、足元に転がる。