エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 なんと自意識過剰な言葉だろう。しかし清貴が言うと妙に納得してしまう。

「そういうこと……でしょうか……」

 ごまかしたが羞恥から赤くなった顔ではっきりと肯定しているようなものだ。

「よかった。俺もこういうの慣れてなくて」

(え、絶対嘘だ)

 清貴のような男性が、女性関係に疎いはずなどない。

「あ、疑ってるだろう。でも本当なんだ。自分からアプローチしたのは初めてだ」

「アプローチって、私に?」

「君以外に誰がいる?」

 苦笑を漏らすその姿さえ、菜摘の目にはかっこよく映る。

(ど、どうしよう。これ……私、どうしたらいい?)

 まだ二度目だが、そんなことどうでもいいと思えるほど彼に惹かれている。そして彼もまた菜摘のことを意識していると言っている。

 清貴のような皆からの注目を浴びるような男性が、女性にだらしなければすぐさま噂が広がるはずだ。しかし友人から聞いたところそう言った類の話は聞かなかった。一方的にモテすぎて困るという話はあったが。

「そういうことで、これからよろしく」

「あ、はい」

 このとき何がよろしくなのかさえ分かっていなかった菜摘だったが、ことのときが間違いなくふたりの始まりだった。

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