エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 腕を優しく撫でられ、菜摘の涙腺は崩壊する。

「……ごめんなさい、ごめんなさい」

「いいのよ、家族なんだから」

 情けないことにただ泣きじゃくりながら、謝罪することしかできない。しかしそんな菜摘を祥子はもう一度しっかりと抱きしめ背中をさすった。

 こんなにも自分のことを思ってくれている。今までの自分がどれほど周りをみていなかったのかと恥ずかしくなる。

 祥子の言葉に「ここにも私の家族がいる」そう思えた。


 リビングルームには心配した義父の秀夫も菜摘たちが部屋に入ってくるのを待っていた。

 立ち上がって出迎えてくれたときには、菜摘は心配をかけた申し訳なさとまた受け入れてくれる感謝の気持ちで深く頭を下げた。

「菜摘さん、無事でよかった。苦労したね」

「いいえ、ご心配をおかけしました」

 秀夫に促されて、菜摘と清貴は向かいのふたり掛けのソファに並んで座った。義父を前に固まってしまう。当然あの事を知っているだろうから。

 菜摘の緊張が伝わったのか、清貴が菜摘の膝においてある手をギュッと握った。彼の方を見ると目が合う。すると彼がゆっくりとうなずいた。言葉にはでていないけれど「大丈夫だ」という意志が伝わってくる。

 それまで強張ってばかりだった体から、ようやく少し力が抜けた。きちんと話ができるように呼吸を整えた。

 祥子がやってきて秀夫のとなりに座ると、清貴が口を開いた。

「親父、今回は俺たち夫婦のことで心配をかけた。すまない」

 清貴に合わせて菜摘も頭を下げる。

「まあな、夫婦には色々あるから。それでだな――」

「いや、待って。先に俺の話を聞いてほしい」

 秀夫の言葉を遮るように、清貴が口を開く。秀夫は少し戸惑った様子だったが、うなずいて清貴に話の先を促した。

「俺、会社は継がない」

「えっ!」

 彼の発言にとなりにいた菜摘は声を上げる。秀夫の方を見ると眉間にしわを刻み難しい顔をしていた。

「どういうことだ」

 祥子も心配そうに、父子を見つめている。

「親父たちももう知っていると思うが、菜摘は妊娠しづらい体質みたいなんだ。そんななか跡取りを産まなければいけないというプレッシャーを与えたくない」
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