エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 清貴が綺麗だと言ってくれて、ほっとした。今日の目的は彼の妻としての役割を果たすこと。しかし周囲の評価だけでなく、清貴自身に認めてもらいたかったのでまずは自分に合格点を出す。

 彼にエスコートされて会場を歩くと、様々な相手から声をかけられた。彼の隣でインプットした情報を思い浮かべながら、隣で笑顔を浮かべる。

 これまでこういったパーティにひとりで参加していた清貴がいきなり妻をつれてきたとあって、みなとなりに立っている菜摘に興味があるようだ。清貴が頃合いを見て紹介した際に、笑顔で挨拶を交わす。

 何人かの人とやり取りしながら「これが社交というものなのか」とやっと理解し始めたころ外資系の銀行の方と清貴がその場で話し込んでしまった。

 その方の奥様は外国の出身のようで、先ほどご主人とも英語で会話していた。

 菜摘は少し勇気を出して英語で話しかけてみると、それまでこわばった表情を見せていた夫人が表情をやわらげた。

 話しのきっかけになったのは、奥様がつけていたカメオのブローチだ。

 それが彼女のご主人のカフスボタンとお揃いだったのでその話をすると、嬉しそうに結婚記念日ご主人から贈られたと話をしてくれた。

 そこからどんどん会話が弾み清貴たちが難しい話を終えた後、向こうのご主人を交えて四人で会話するほどだった。最後に夫人が少したどたどしい日本語で「ありがとう、菜摘さん」と名前を呼んでもらえるほどだった。

「菜摘、君は案外社交に向いているな」

「そんな……たまたま話が合っただけで。あとは英語が喋れたことが大きかったかな」

 かれと留学するために、もともと得意だった英語を特に力を入れて勉強した。結局留学の夢はかなわなかったがこうやって役に立ってよかった。

「実は海外での事業拡張のためにずっと近づきたいと思っていた相手だったんだ。今日の菜摘は幸運の女神だな」

「おおげさだよ」

 喜んでいる清貴はいつになく饒舌だ。その上手放しで菜摘を褒めるものだからうれしいけれど照れてしまう。頬をそめて清貴を見つめるその姿は、周囲から見て仲の良い新婚夫婦のそのものだった。

 しかしその姿をよく思わないものもいる。ふたりを不服そうに見つめるのは澪だ。彼女は父親の傍で次々にくる客たちに挨拶をしていた。

 清貴と菜摘もやっと人が少なくなった丸森社長のもとに挨拶に向かった。

「この度はおめでとうございます」
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