エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 ひきとめなくていいのかと思うが、清貴は丸森社長と話を続けていた。

「このような場で失礼しました」

「いや、澪はわがままに育てすぎたから君からはっきり言ってもらって助かったよ。これで清貴君離れできるだろう」

「そうだといいのですが……」

 丸森社長は菜摘の方を見てもう一度頭を下げた。

「娘がすまなかった。本来ならば本人が謝るべきなのだろうが、もう少し時間がかかりそうだ」

「あの、本当にもう大丈夫ですので」

「そう言ってくれると救われるよ。今日はわざわざパーティに来ていただきありがとう」

「いえ、ますますのご発展をお祈りしております」

 頭をさげて丸森社長の元を離れる。

「さて用事も終わったし、さっさと帰るか」

 清貴と共に会場を後にしようと歩き始めると、次々とふたりの周りに人が集まった。

 いつもこういった場所には彼はひとりで参加しているので、新妻を連れているのが珍しいのだろう。

 いつもなら軽くあしらってその場を去る清貴だが、今日は菜摘を周囲に紹介する目的がある。それを果たすべく、いつもよりもたっぷりと社交の時間を取った。

 それなりの時間をかけて周囲と話し終えたふたりは帰りの車に乗り込んだ。菜摘は慣れないことにぐったりとしていたが、やりきったという達成感で心地よさを感じていた。しかし気になることがあり清貴に尋ねる。

「私、今日ちゃんと清貴の奥さんできていた?」

「なんだ、いきなり。周りの様子を見ていてわかっただろ。もしかして初日に俺が言ったことをまだ気にしているのか?」

 菜摘が小さく頷くと、清貴は彼女に言い聞かせた。

「恥ずかしくなんかない。誇らしいくらいだった。ひとりで行くと億劫でしかたなかった場所が菜摘は隣にいてくれるだけで随分違った。助かった、ありがとう」

 清貴に認められた菜摘は甘い喜びが広がった。頬を緩めた彼女を見た清貴は彼女を引き寄せた。そして彼女のこめかみにキスを落とした。

 菜摘は突然のことにびっくりして目を見開いたが、清貴もまた自分のしたことに驚いていた。

「すまない……つい」

「ううん、平気」

 互いに目を泳がせ気まずい雰囲気が流れた。少し赤くなった頬をしながら外を見ていると、ふと澪と会ったカフェが目に入り、今日の彼女のことが思い浮かんだ。

「澪さん、大丈夫かな」
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