エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
「いつまでも子供でいられないんだから、今回がいい機会だったんだ。人に迷惑をかけたらどうなるか理解しないといけない」

「それはそうだけど……」

 他の人ならまだしも、憧れを抱いている清貴から公衆の面前でああいったことを言われて傷ついているかもしれない。

「俺は、自分の妻が邪険にされてだまっていられるような人間じゃない。それだけのことだから菜摘は気にしなくていい」

「うん……わかった」

 その言葉に、我に返った。彼は菜摘のためにああいったことをしたわけではない。〝彼の妻〟のためにそうしたのだと釘をさされた気がしたからだ。

 自分の気持ちが彼にあるからついいいように解釈しそうになる。

(変な期待しないように、気をつけなくちゃ)

 菜摘は気持ちを新たに、清貴の方を見る。

「どうかしたのか?」

「ううん、なんでもない。今日は疲れちゃった」

「そうか、家までもう少しかかる。起こすから眠っていればいい」

 清貴が菜摘を優しく抱き寄せた。彼の肩に頭を乗せ、それに甘えてゆっくりと目をつむる。

(こんなに大切にされているんだから、十分じゃない)

 菜摘は自分にそう言い聞かせて、彼の体温を感じながらゆっくりと目を閉じた。



 穏やかに日常は過ぎていった。忙しい清貴は海外出張も多く、家に不在のことも多々あった。

 普段も帰宅が遅く顔を合わせないこともあったが「そういえば、最近会ってないなぁ」と思うタイミングで、彼から電話があったりメッセージが送られてきたりした。

 彼なりの気遣いに支えられながら、一緒に食事ができる日などは少し手の込んだ手料理をふるまったり、家で快適に過ごせるように整えたりしていた。

 互いにこの生活がうまくいくように努力して、ふたりの夫婦の形がなんとなくだができてきていた。

 そんな十月の秋晴れのある日、その日も清貴は出張で不在にしていた。帰宅は明日の予定だ。

 昼休みふとスマートフォンを見ると、メッセージが届いていた。清貴からかもしれないと胸をはずませたが、相手は桃子だった。

 ちょっとがっかりしてしまったことを申し訳なく思う内容だった。

【なっちゃん、お誕生日おめでとう。今度お祝いさせてね】

 ちゃんと覚えていてくれたことをありがたいと思う。お礼の返信をしながら、どこかで清貴からの連絡があるのではないかと期待していたことを反省する。
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