エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
(普通の夫婦じゃないから仕方ない。そこまで期待したら申し訳ないもの)

 おそらく菜摘が伝えれば、清貴は祝ってくれるに違いない。しかしそれでは寂しいと感じてしまう。

 わがままだとわかっていてもそれが正直な気持ちだった。

 出張でいないのだからと割り切ってきにせずに、ちょうど職場の人に誘われた飲み会に参加することにしていた。一応清貴にも報告している。

 会えないのに必要かと言われればそうでないのだろうけれど、一応夫婦なのでこういった予定を伝えておいた方がいいに決まっている。

(まぁでも、今日は会えなくてもよかったのかも)

 今日はちょうど夜を一緒に過ごす日だ。ただ誕生日なのに義務感で抱かれるのにはやはり抵抗があった。完全に菜摘の気持ちの問題なので拒むこともできないが、気持ちの問題だからこそ難しいのだ。

 彼と夜を過ごすことは、菜摘にとって心と体すべてをつかって受け入れることだから。

 少ししんみりしながら、仕事を終えて職場の飲み会に参加した。

 派遣社員だからと言って区別することなく、仲間として扱ってくれる。

 よってプライベートの話もするので、話題は菜摘の結婚生活にも及んだ。ことの経緯をすべて話をするわけにはいかずごまかしながらだが、お酒を飲んで彼の話をしたせいか少し恋しくなってしまった。

(気を紛らわせるためだったのに、逆効果になっちゃった)

 ほろ酔いの菜摘は、これからカラオケに行くという同僚と別れてひとり誰もいないマンションに帰ることにした。

 胸の中にある恋しさは、誰かと一緒にいてもなくならないと自覚したからだ。思いを寄せる相手、清貴以外とは。

 電車に乗っていつもと変わらない道を通りマンションに戻った。鍵を開けて中に入り手を洗ってからキッチンに直行する。のどが渇いてしまったから水を飲もうと冷蔵庫を開けた。

「え、何これ……」

 冷蔵庫のど真ん中に、朝はなかったチョコレート色の箱がある。ゆっくりと取り出して蓋を開けるとバースデープレートのついた大きなケーキが入っていた。

「誕生日だろう、今日」

「きゃあ!」

 背後からいきなり話しかけらえて、慌ててしまいケーキを落としそうになった。

「おっと、気を付けて」

 声の主である清貴が手を伸ばして、かたむきかけたケーキの箱を救ってくれた。

「あ、ありがとう。っていうか、覚えていたの? 私の誕生日」
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