エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 はっきりと伝えた。誤解のないような言い方をしたつもりだが、菜摘の突然の言葉に清貴は信じられないのか驚いた顔で戸惑っているのがわかった。

「今夜、俺が菜摘を抱いていいってこと?」

 はっきりと確認するように尋ねられて、菜摘はゆっくりと頷いた。


「それって――」

「何も言わないで。ただ抱いてほしいの」

 ぎゅっとにぎったこぶしは力を入れすぎて痛いほどだ。彼がどういう行動をとるのかわからずに怖い。

 笑いながら冗談ととらえるのか、急に色気をだしてきた菜摘を冷たい目で見るのか。それとも――。

 うつむいていた菜摘の視界に、清貴の大きな手のひらが見えた。それと同時に体が傾き驚きの声を上げる。

「きゃあ」

 次の瞬間菜摘は彼に抱き上げられていた。

「清貴?」

「なんだ? 寝室に行きたいんだろ? それとも早くも怖気づいた」

 ぶんぶんと頭を振ってぎゅっと彼に抱き着いた。彼が望みを叶えてくれるとわかってほっとしたと同時に、ドキドキする。

 ふたりが結婚して初めて義務ではなく、ベッドを共にするのだ。菜摘にとってはとても意義のあることだ。

 彼はそのまま菜摘をベッドに降ろし座らせると、彼もとなりに座った。ふたりぶんの体重を受けとめたベッドがギシッと音をたてた。

 清貴の手が伸びてきて、菜摘の頬をにふれた。

「誘ってきたのは菜摘だ。だから今日は何があってもやめられない。それわかってる?」

 清貴の目に熱いものがこもる瞬間を見た。視線だけで菜摘の体の奥に火をつけるほどの強いまなざしだ。

「もちろん、わかってる」 

 自分から誘うなんて生まれて初めてのことだ。だからこそ決心はかたい。

「だったら、菜摘からキスして」

 至近距離で菜摘の覚悟を試すような清貴の言葉に、息を飲んだ。

 しかし今日の菜摘は、ここでやめるつもりはない。自分の気持ちを分かってもらうために、清貴の頬に手を伸ばす。

 そして至近距離で彼をずっと見つめる。

 男性にしてはきめ細やかな肌。意志の強そうな眉に、光の加減でわずかに茶色に見える瞳。ときに意地悪をいい、時に菜摘を甘やかす形の良い口。

 彼の柔らかい唇に指を這わせる。確かめるように確認するように。すると待ちきれなかった清貴が口をひらき、菜摘の指をなめる。

「あっ……」

「いったいどれだけじらすつもりなんだ」
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