エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 力を入れたせいで、手の中にある離婚届がクシャっと音を立てた。このまま破り捨ててしまいたい衝動に駆られたが、理性がそれを押しとどめた。

(少し落ち着け、冷静になれ)

 いまだかつてないほど動揺している自覚はある。とにかく自身の暴言以外に何か理由がないか考えてみる。

「そういえば、この画像」

 手から滑り落ちたスマートフォンを拾い上げる。急いで送られてきたアドレスを確認する。しかし知らないアカウントからだったので、急いで知り合いに特定を頼んだ。

 賢哉の話ではその場に桃子もいたはずなのに、完全にふたりで産婦人科からでてきたような写真にしてわざわざ匿名で送りつけてきている。そこに何か意図があるとしか思えない。

 今冷静になって考えれば、おかしなことにすぐに気が付く。しかしあのときは、菜摘の態度が変だったこともあわさって色々と良くない想像に結びつけてしまった。

 自分の行動が思考がどれほど浅慮だったかと、今さらながらに頭を抱える。自分はこんな人間ではなかったはずだ。常に先のことを見据えて結果を出してきた自負がある。

 それなのに菜摘のことになると、一瞬にして情けない男に成り下がってしまう。

「菜摘、一体どこにいるんだ」

 先ほど賢哉たちは菜摘の様子について尋ねていた。と、いうことは彼らに連絡はしていなさそうだ。

 清貴は菜摘に電話しながら、彼女の使っていた部屋に入る。そこは引っ越してくるときとさほど変わらないほど綺麗になっていた。

 クローゼットの中を見ると清貴が買い与えた洋服や小物類は残っているが、彼女が実家から持ってきたものはすべてなくなっている。ここに来た時に使っていたボンストンバッグと一緒に。

「まさかもう出て行ったのか」

 ショックで指先から冷えていくのを感じる。自分のしでかしたことがどれほどのことだったのかと改めて思い知った。

 チェストやデスクの引き出しを探してみるが、行先がわかりそうなものはなかった。彼女の交友関係に連絡を取ろうとするが、実家以外どこも思いつかない。

 彼女と距離が近づいたなんて思っていたのは、自分の思い上がりだったのだ。

 どこまでも後悔しかない。けれどそれでも清貴は菜摘を探さないといけない。専門家に依頼をしようとして、菜摘へのコールをやめた途端電話が鳴り始めた。

「菜摘?」
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