23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「随分と自信があるのね。そんなに、颯から毎晩求められて、抱かれてる訳?」
実花子は、背の低い私と目線を合わせるように、少しかがむと、その綺麗な奥二重で私を映した。
「颯は渡さない……今日は颯の接待に同席するんだけど、泊まりなの。で、颯と同じ部屋をとってるの、意味わかる?」
「え?ど、うして……?」
麻美から聞いていたが、まさか、同じ部屋だとは思っても見なかった。
「接待の旅館が、満室だから、同じ部屋にしたの。颯は何も言わなかったわよ。たまには、私とのセックスも悪くないって事じゃない?私達、相性良かったから」
勝ち誇ったように、饒舌に話す実花子から、視線を外すと、私は、逃げるように、女子トイレを後にしていた。
角をまがって、誰もいない休憩スペースにたどり着いてから、ポケットから白いハンカチを取り出して、溢れた涙を拭う。
白いハンカチの端には、猫のマークと『綾乃』と赤い糸で、刺繍がされている。亡くなった母がプレゼントしてくれたハンカチだ。同じモノが2枚あったが、1枚は、随分前に、一度だけ会った男の子に、貸してあげたままだ。
もう会うこともない、笑顔の素敵な男の子。
私は、瞳をグッと押さえつけるようにして、涙を吸い取らせる。颯と同じ柔軟剤を使っているからだろうか、僅かに、颯の匂いがした気がした。
「颯……」
明日の夜、どんなに遅くなってもいいから、颯とキチンと話そう。そして、今の自分の気持ちを正直に颯に伝えたい。
そうじゃないと、今のままじゃ、もう颯とは居られない。
颯が、恋しくて、堪らなくて、自分が自分じゃ、なくなってしまいそうだから。