23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「ごめん、実花子……」 

「颯……」

俺は、実花子から身体を離すと、ビジネスバックを抱えて、部屋の入り口へと足を向ける。

実花子の細い腕が、スーツのジャケットの袖を僅かに引っ張った。

俺は振り返らずに、そっと、左手で、実花子の掌をジャケットの裾から解く。扉を閉めれば、すぐに扉の向こう側から、実花子の泣き声が聞こえてきた。

これ以上は、余計実花子を傷つけるだけだと思った俺は、振り返ることはできなかった。


ーーーーその時、スラックスの中のスマホが震える。

俺は、その相手からのメールを確認すると、走り出していた。

美弥は誰にも渡さない。

俺のシンデレラは、美弥一人だけだからだ。
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