23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
俺は、実花子の両肩に手を置いて、少しだけ距離を置いた。

そして、実花子の目を真っ直ぐに見つめた。

「……美弥が、俺の忘れられない人だから」

実花子の瞳が、大きく見開かれる。

「……正直、実花子と付き合った一年、公私共に充実してたし、居心地も良かった。実花子は、仕事もできるし、プライベートでは、家庭的で、ほんと、俺には勿体ない、いい女だなっていつも思ってた」

「じゃあ……どうして?」

実花子が、俺の腕をぎゅっと掴んだ。

「実花子が結婚したいと思ってくれてるの分かってた……でも、俺さ、結婚を考えた時……昔出会ったきり、ずっと忘れることが出来なかった美弥の事が過ぎってさ。だから……実花子との未来を素直に描く事が出来なかったんだ……全部、俺のせいだから。実花子は悪くない……ごめんな」

思えば、実花子とこんな風にきちんと別れ話をしたのは、今日が初めてかもしれない。

俺は、もう一度、実花子を、そっと抱きしめた。
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