23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「……あ……の……」

目の前のことが現実だと認識するのに、少し時間を要してから、ようやく、2文字発した私を見ながら、彼はクスッと笑う。

「あそこのコンビニ店員の綾乃さんだよね?これ美味いよ、トンカツ弁当」

「何で……、あっ」

どうして私の名前を知ってるのか、訊ねようとして気づいた、いつも制服のシャツに付けている名札だ。

お腹が減っていたのか、彼は、あっという間にお弁当を食べ終わると、ベンチ横のゴミ箱に、ぽいと捨てた。

「ご馳走様でした」

「あ、……お粗末さまで……」

(わ、私は、何言ってんだ……)

自分が作った訳でもないのに恥ずかしい。そこまで言って、口籠もった私を見ながら、彼は唇を持ち上げた。

「ねぇ、今から俺ん家来ない?その子連れて」

(え……?何て……?)

一瞬で頭が真っ白になって、彼の言葉が日本語に聞こえなくなる。

「えっと……もう、一度……聞き間違えてしまったみたいで」

薄暗くて良かったと心から思う。

きっと私の顔は、真っ赤だ。そんな恥ずかしい、聞き間違いをしてしまうなんて。

彼は、ケラケラと声を上げて少年みたい笑った。いつもコンビニで買い物しているクールなイメージとは違って、その笑顔に思わず見惚れてしまう。

「そうだよな、名前も知らない奴じゃコワイよな。俺の名前は、安堂颯(あんどうはやて)。颯でいいよ。で、綾乃さんの下の名前は?」

ミャーが食べ終わり、口元と髭を手で拭いながら、ゴロゴロと喉を鳴らす。
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