溺れるくらいの恋を…君に
ホテルのスイートルーム━━━━━━

呼び鈴を鳴らすと、スタイルのいい美しい女が顔を出した。
「水瀬、いらっしゃい!入って~」

抱きつき、中へ促す女。
この女は、水瀬のセフレのような存在だ。
“姉貴”と呼んでいるのは、水瀬のいとこの嫁だから。
名前は、弓原 なずな。
いわゆる政略結婚で、なずなといとこは籍だけで一緒に住んでいない。
お互い、好き勝手遊んでいるのだ。


「早くヤろうぜ。時間がもったいない。
一刻も早く、百合愛の所へ帰りたい」
着ていたTシャツを脱ぎながら言う、水瀬。

「はぁ……ったく…つれないってゆうか、つまんないってゆうか……!
水瀬、シャワーは?」

「必要ない。
もう俺は、百合愛以外の人間じゃイケない。
姉貴はイカせてやるから」

「………」
「ほら、早くベッド行こうぜ」

「もういいわ!
私も、なんか冷めた」
「は?」

「で?
誰を探してほしいの?」
ため息混じりに、ソファに座ったなずなは煙草を吸い出した。

「中屋敷 一路って奴」

「は?名前だけ?」

「うん。
百合愛の大学の同期で、元彼」

「少し時間かかるわよ。情報が少なすぎるから」

「わかった」

「でも探してどうするの?」

「百合愛に謝ってほしい。
そしたら百合愛は、前を向ける気がするから。
…………きっと、百合愛の中で消化できてないんだと思うんだ。
だから、あんな………」

「━━━━━でも、そんな男が謝るとは思えないわよ。
謝らせるなら、ちゃんと心からの謝罪がないと和解は成立しないわ。
百合愛ちゃんだって、消化できないわ」
水瀬からの話を聞いて、なずなが言った。

「じゃあ、どうしてあげればいいんだよ!!?
百合愛は一生、あの男を引きずって生きてくのかよ!?」

「そんなの簡単よ!」
「は?」

「その男よりも、百合愛ちゃんが“幸せ”になればいいのよ!」
「え?」

「言っておくわ。
元彼に例え…心からの謝罪をされても、百合愛ちゃんが“自分で”乗り越えないと何も解決しない。
私の知り合いに男に乱暴された子がいたけど、その子は言ってた。
例え、あいつがこの世からいなくなっても、私の傷は一生消えない。
だから謝罪なんかいらない。
ただ、一生私にそのツラを見せないでくれたらそれでいいって。
私は、私の力で幸せになってみせるって!」

なずなは、水瀬を見据えて言ったのだった。



“まっ!水瀬が探せってゆうなら、探すわ。
また連絡する”
なずなに一路のことを任せ、水瀬はマンションに戻った。

シャワーを浴びて、百合愛の首の下にゆっくり腕を差し入れた。
包み込むように抱き締めた。

「百合愛…」
いい匂いがする。

愛しくて堪らない。

だからこそ、一路のことは許せない━━━━


どうすれば、百合愛を幸せにできるのだろう。


水瀬は、百合愛の頭をゆっくり撫でながら思いにふけっていた。
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