溺れるくらいの恋を…君に
波乱
「百合愛ちゃん」

後日。
百合愛が会社から出ると、冬臣が待っていた。

「え?冬臣くん?」
「お疲れ」

「うん…」
なんとなく、目を合わせずらい。

「プールでは、ごめんな!」
頭を下げる、冬臣。

「あ、冬臣くん!頭を上げてください!」
「あぁ…」

「私がなんか、怒らせるようなことしたかな?」

「ううん!百合愛ちゃんは、何も悪くない!」
「そっか!良かったです!」

微笑む百合愛。
冬臣の心臓が、ドクンと痛む。

冬臣は、この痛みの正体をもう……確信していた。

「百合愛ちゃん」
「はい」

「お願いがあるんだ━━━━━━━」



そして二人は、駅ビルに来ていた。
「ごめんね、謝りに来てこんなこと頼んで」

「いえ!水瀬くんの友達の頼みですから!
それに水瀬くんは今日、忙しいみたいで予定があいてたので!」
冬臣は、百合愛にプレゼントのアドバイスをしてほしいと頼んだのだ。

「何がいいと思う?」
「相手はどんな人ですか?」

「可愛い人。
見た目は地味なんだけど、その人を包む雰囲気が柔らかくて甘い。
きっと…俺の想いは届かないけど、プレゼントしたいなって!」

「想いが届かないって、その人はもしかしてもう恋人がいるとかですか?」

「そう」
「そうですか…」

「そんな暗い顔しないでよ!
ほら、アドバイス!ちょうだい!」
「あ、はい!」

切なく微笑む冬臣に、百合愛も胸がキュッと痛む。


「━━━━━アロマとかどうですか?」
雑貨店に向かい、勧める百合愛。

「へぇー!いいかも?」

「どんなのが好きかな?」
呟きながら、真剣に選別する。

その姿を、冬臣はただ見つめていた。

「これなんかどうで━━━━━冬臣くん?」
冬臣に商品を見せようとして、見つめられていたことに気づく。

「あ、ごめん。
…………百合愛ちゃんがいいと思うなら、そうする」

「え?ダメですよ!冬臣くんがちゃんと選ばないと!」
「え…あ、そうだよな」

「想いが通じなくても……万が一受け取ってくれなくても、冬臣くんの想いは伝えることが出来ます。
だから、ちゃんと相手を想って選んだ方がいいと思います」
力説するように言う百合愛に、冬臣は複雑な思いをかかえながら………“あぁ、やっぱ好きだ”と再度確信していた。
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