green mist      ~あなただから~
 ~真央~

 はあー 今日、何度目のため息だろか?
 香音との電話の事が気になって、つい、ため息が漏れてしまう。


「真央、小さい来客だぞ?」

 いつもの事だが、ノックもせずに矢沢が部屋に入ってきた。


「誰だよ? アポ取ってから来るように言ってくれ」

「悪いが、俺のクライアントなんだよ。」

「はあ? この忙しいのに、何故俺が、お前のクライアントに会う必要があるんだ?」


「入れよ」

 入口に目を向けたが、視線を下ろす羽目になった。

「良介! どうした?」

 何故、良介がこんな所に?


「事務所の入り口で、ランドセル背負って立っているから、用事があるのかと思って声をかけたんだ」

 良介は、ランドセルを背負ったまま部屋に入ってくると、睨みながら俺に近づいて来た。


「おじさん! 僕は、おじさんを訴える事にした!」

「はあ? 何、バカな事言っているんだよ」

「こっちのおじさんが、俺の弁護をしてくれるからな!」

「おい!」

 俺は、しれーとして立っている矢沢を睨んだ。


「さあ、二人とも座って」

 矢沢が、良介をファーに座らせた。仕方なく、俺も座った。


「では、依頼人からの訴えをお聞きしましょう。さあ、緒方良介くん、お話しして下さい」

「ねえちゃん…… 泣いてたんだから……」

「ねえちゃんとは、水野香音さんの事で良いですか?」

 矢沢は、真面目な口調で話しながら、俺を見てニヤリとした。


「はい」

 良介は、矢沢に向かって真剣な表情で返事をした。なんだか、ややこしい事になってきたぞ。

「全く……」

 俺は、ため息をついた。
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