green mist      ~あなただから~
 「あの…… この先はどちらに?」

 タクシーの運転手が申し訳なそうに聞いてきた。

「あっ、その信号を左へお願いします」

 運転手さんに向かって言った。

「はい、かしこまりました。あの…… 余計な事ですが、自分達が思うほど、周りから見たら年の差なんて気になりませんよ。お二人、お似合いです」

「えっ?」
「えっ?」
 同時に、声が出てしまった。

「色々考えずに、二人で遊びにでも行ってみたらどうですか? この先は?」

「えっと。そのまま真っすぐでお願いします」

 運転手に答えながらも、言われた事を頭の中で理解しようとした。遊びにいく? 彼と? 絶対ありえないでしょ。想像も出来ない。

「明日は、お休みですよね」

「はい?」

 彼の言葉に驚いて返事をする。

「どこか行きますか?」

「私とですか? 時川さんは、お仕事じゃないんですか?」

「あなが以外にいないでしょ? それに、僕にも休みぐらいありますよ」


「あっ。ここでいいです。あのアパートなので」

 目の前に見えるアパートを指さした。

「それでは、明日、ここで待っています」

「あっ。はい」

 本当にいいのだろうか?

 運転手はもう、何も言ってくれない。


「あっ。映画! 見たい映画があるんです。ダメですか?」

「分かりました。それでは、その映画を見に行きましょう」

 あーっ。やっと彼が笑ってくれたよー

「はい。あの、名刺の番号に、お電話していいですか?」

「もちろん。待っています。では、明日、九時でいかがですか?」


「はい」

 緩む顔を我慢できず、彼に笑顔を向けて手を振った。


 遠ざかるタクシーを見送って、家の中にスキップしながら入った。

 ベッドの上にダイブ!
 足をバタバタ、ゴロゴロ。
 どうしよー 
 やばい何着て行こう。
 お風呂に入って、パックして。

 そうだ、映画の時間調べなくちゃ。
 こんなに、テンション上がったのはいつぶりだろう?
 楽しみで、楽しみで仕方ないよー


 パックを顔から外し、テーブルの上に置いた名刺を見つめる。悩みになやんだあげく、ショートメールにしてみた。電話だと、忙しい彼に時間を取らせしまう気がした。

 今日のお礼と、明日の時間の確認をした。
 ドキドキ

 すぐに返事が帰ってきた。それから、ラインの招待もしてくれた。
 なんだか、すごく彼に近付けた気がした。

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