green mist      ~あなただから~
 そうこうしているうちに、車はパーキングに入った。

 彼は、居酒屋と言ったが、非常に上品でモダンな雰囲気の和食のお店だった。しかも、個室に通された。

「僕は、生ビールかな」

「えっ? 車は?」

「車を停めたのは、この店の駐車場だから一晩止めても大丈夫。家も、近いしね」


「ああ…… ちょっと、ここがどこだか分からないんですけど……」

「へっ? あなたのお家からも、それほど遠くないですよ」


 彼は彼は、ポケットかあらスマホを出すとお店の場所を教えてくれた。

「本当ですね。あまり、こちらの方は来た事がなくて」


 そんな話をしていると、テーブルに料理が運ばれてきた。

「時川さん、その説は大変お世話になりました。お陰様で、今は落ち着いて営業出来ております」

 店主である、四十代半ばである男性が入ってきた。よく分からないが、話の流れでは、店舗の権利の事で裁判になり、時川さんが弁護をしたらしい。


 私は、野菜の天ぷらを口に入れたところだった。

「うわー 美味しい。ニンジンがこんなに甘いなんて」

 衣がサクサクで、野菜甘味が口の中でほわっと広がる。


「ええ。ちょっと、珍しいニンジンなんですよ。こんなに可愛らしい方に喜んで頂けて嬉しいです。もし、ニシンがお嫌いでなければ、うちの自慢の南蛮漬けがあるので、サービスさせて頂きますよ」

「うわー。お魚大好きです。食べてみたいです」

「それは良かった」

 店主がニコリと微笑んでくれたのだがが、彼は、ぐっとビールを飲むと、

「お店が順調そうで何よりです」と、話を切ってしまった。


 南蛮漬け、持ってきてくれるよね?

 本当に、出てくるもの全てが美味しくて、大満足だ。アルコールも入って、いい気分だ。


「満足したみたいだね」

「ええ、もちろん……」

 彼が、じーっと私を見ている。眼鏡越しに見える瞳は、とっても綺麗だ。その瞳がふっと揺れた。


「実は、お話ししたい事があるんです。僕は…… あなたの事が、好きなようだ」

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