green mist      ~あなただから~
「よく見ておいて」

 マンションのドアの前で、彼女に分かるようにIDを入力する。

「覚えちゃいましたけど、いいんですか?」

「当たり前だろ。いつでも来てくれていいから。どうぞ、入って」

「あっ。はい」

 彼女を部屋に促した。


「申し訳ないが、僕は仕事をさせてもらう。バスルームもキッチンも好きに使っていいからね」

「はい。お邪魔しないようにしますね」

「そんなに、気を使わないで」


 僕は、彼女を引き寄せると、唇に軽くキスをした。軽くしておかないと、後には引けなくなりそうだから。


 時々、彼女がドアを開けたりする音がする。誰かが家にいてくれる事が、こんなにも安心するものだと知った。
 いや、彼女がだからだ……


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