green mist      ~あなただから~
 指示されたホテルのレストランに、予定の時間より少し早く着いた。情報漏洩も考え、事務所で話をすればいいと思うが、宮野社長が見せたいものがあるとかで、この場所になった。

 窓際のテーブルに着き、一息ついていると、鼻を霞める甘い匂いに嫌な予感がした。


「あら、早かったのね」

「なんで、宮野まで来るんだ? 社長と話をするはずだけど」

「ええ。勿論パパも来るわ。今日は、弁護の依頼とお見合い話もあるからって、呼ばれたんだけど……」

「はあ? なんだそりゃ。それなら、俺は帰るよ」


「待って! 弁護の事は、どうしてもあなたに頼みたいの。それに、私は、時川くんとのお見合いを承知したわ」


 宮野の目が、冗談を言っているようには思えない。宮野も、父親の弁護の件で必死なのだとは思うが、見合いや結婚とは別に考えるべきだろう?


「そうよ、真央、話くらいは聞いてもいいんじゃない?」

 テーブルに近づいて来た姿にぎょっとした。母まで来るとは、目的が不純すぎる。


「何が、話ぐらいだよ。見合いなんて話にもならないだろ」

「ちゃんと話をしたじゃない。宮野さんとの結婚の話があるって。あなたには、良い話だと思うのよ。もちろん、仕事の話もこれからするわ。もっと、合理的に考えなさい」


「合理的って、仕事と見合いが一緒って事か?」

 全く話にならない。


「そうそう、入口で水野さんにお会いしたわ。お仕事中だったみたいね。このホテルの植物も管理されているのね。お見合いで来ている話をしたのよ」

 なに! 
 一瞬、頭の中が真っ白になった。
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