green mist      ~あなただから~
 「これ、静かに! 水野さん、そもそも、その約束は何故したのかね?」

 何故、約束をしたのかんなて考えた事もない。約束なのだから、守ってくれる物だと思っていた。

「分からないです……」


「時によって、約束ってのは、不安を隠すことに使うものだったりするんだよ。約束を守ってもらう事が、自分が安心するための理由だったりする事もある。約束を守る事だけにとらわえれて、大事な事を見失ってしまう事だってあるんだよ。
 あの弁護士さんは、あなたの事を大事に思っておると思うがね…… 水野さんは、弁護士さんの事はもう嫌いなのかな? まあ、あまり焦らない事だよ……」


 嫌いなんてこれっぽっちも思っていない。

 おじいさんの言われた事が、胸の中にじんわりと伝わってくる。
 相手を思うってどういう事なんだろう? 


「姉ちゃんを泣かせるなんてゆるせないよ」

 良介くんが、口を尖らせて私を見ていた。

「心配かけてごめんね。私も悪いのよ」

 視線を良介君に合わせて、笑ってみせた。
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