green mist      ~あなただから~
 なんとか立ち上がった真央さんを、矢沢さんと二人で抱えて、表通りまで出た。

「水野ちゃん、タクシー捕まえてくれる?」

「はい」

 丁度通りかかったタクシーに手を上げた。


「ほら、しっかりしろ」

 矢沢さんが、彼をタクシーに乗せてくれた。


「ああ…… 大丈夫だ」

「そうだな…… 水野ちゃん、あとは頼んだよ」

「はい。ありがとうございました」


 私も、タクシーの後部座席に乗り込んだ。

 彼は、頭を背もたれにつけ、目を閉じている。


 私は、運転手に行先を告げると、窓の外へ目を向けた。静かになった車内に、何を話したらいいのか分からない。


「おや? 偉くお飲みになったようですね。これじゃ、彼女も話しかける気にもなりませんよね?」

「えっ?」

 バックミラーに映った運転手さんの顔を見る。

「ああ、あの時の……」

 合コンの帰りに、彼と乗ったタクシーの運転手さんだ。


「また?」

 ダルそうに目を開けた彼が、ぼそっと言った。
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