green mist      ~あなただから~
「偶然ですね。あの時は遊びに行かれましたか?」

「はい。お陰で、楽しかったです。まあ、色々とありましたけど……」

「そりゃそうでしょ。誰かと一緒にいれば、色々ありますよ。それも、楽しいじゃないですか。
 前回は、冷静で堂々としていた彼が、今夜はベロベロ状態。ちょっとおどおどしていた彼女が、今夜はこんなに堂々として、しかもいい表情していらっしゃるんですから」


 運転手さんは優しい笑みを浮かべながら、ハンドルを握っていた。

「運転手さん、ちょっとおしゃべりが多いんじゃないですか? そのうち訴えられますよ……」


「これは、失礼しました」

 運転手さんは、ミラー越しに頭を下げた。


「真央さん。そういう事を、酔って言わないで下さい。ただでさえ、あなたの発言には重みがあるんですから…… 
 だいたい、運転手さんのお陰で、今の私達があるんですから。訴えるどころか、お礼を言わなければならないと思いますよ」


「うっ…… そうだな、ごめん……」

 もう、誰に謝っているのやら……


「運転手さん、申し訳ありません……」


「いえいえ。可愛いらしいうえに、しっかりされて頼もしくなられましたね…… 彼氏さんも、そんな情けない顔していたら、彼女さんに逃げられちゃいますよ」

「十分に自覚している」


 私の手の甲に暖かな感触が広がった。彼の手が重なったのだ。横目で彼を見ると、背もたれに体を預けて目を瞑ったままだった。


 今日、彼に会うまでは、色々な感情が渦を巻いていて、何が正しいのか? どうするべきなのか? 落ち込んでばかりいたのに……

 今は、この重なった手のぬくもりがある事に、嬉しくて泣きそうだ……
< 99 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop