2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「まあ、俺が社長にならなきゃ実現しないけどな」

照れくさそうに部長がグラスを口に運ぶ。

「きっと実現しますよ」

私の朝活の時間、部長も一緒に勉強している。
参考書探しに勝手に入っていいと言われた書斎には、経済学の本はもちろん、アルコール醸造やいろいろな飲み物の本もたくさん並んでいた。

会社でもそうだ。
部下のいいところを伸ばし、売り上げを上げている。
富士野部長が部長になってから、会社の売り上げは右肩上がりだ。

こんなに頑張っている人が、社長になれないなんてわけがない。
きっと私はなれるって信じている。

「ありがとう、明日美」

そっと部長が私の左手を取る。
その手が離れたときには薬指に指環が嵌まっていた。

「……これは?」

目の高さまで持ってきてしげしげと眺める。
大きめのダイヤがついたこの指環が、ただの指環じゃないことくらい私にもわかった。

「婚約指環。
俺たち、婚約してるのに指環はまだだっただろ?」

「でも、私たちはフリなので……」

こんなの、本当に部長の婚約者になったみたいで嬉しくなってしまう。
でも同時に、これは仮初めのもので私のものにはならないのだと悲しくなった。

「そうだな。
婚約を解消したときは、買い取りにでも出せばいい。
ま、迷惑料みたいなもんだ」

「はぁ……」

そんなに簡単に、こんな高価なもの……いや。
部長からしたら高価でもなんでもないのか。

「……じゃあ、ありがたく」

なんだろう、婚約指環なんてロマンチックなもののはずなのに、急に俗物的になってきた……。
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