捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

(相変わらず、アスター王子はリードが上手いよね)

わたしはダンスは好きだけど、得意分野とはいえない。でも、アスター王子の巧みなリードでいつも自然に足がステップを踏んでスムーズな移動ができる。

それに、去年踊った時とはわたし自身が違う。

あのときのアスター王子はただの上司であって、わたし自身特に意識もしなかった。

でも、今は違う。

色々な経験を積んで悩み抜いた末に、婚約を自分の意思で受け入れた。
アスター王子と、どんな困難があろうと共に生きるのだーーと。固く決意をしたんだ。

わたし自身が、アスター王子と一生一緒に居たい、と思えたから。頑なにならず素直に認めたら、途端に楽になれた。

まだ、わたしは幼すぎて恋だの愛だのわからないし、彼もハッキリとは伝えてくれていないけど……わたしを大切にしてくれていることはわかるし、無理に言わせる必要はないと思う。いずれ、自然に伝えてくださるはず。

去年よりも筋肉がついた鋼のような身体。布越しに伝わるぬくもりと逞しさに、触れた部分がほんのり熱を帯びたよう。
布越しでもこんなふうに密着するのは久しぶりで、意識するなという方がおかしい。彼の太陽を浴びた後の干し草にも似た薫りや、暖かな視線。いちいちドキドキしてしまう。

(でも、今は浮ついてはいられない!まずはローズ嬢を外へ誘い出さなきゃいけないんだ…トムソンは)

チラッとそちらへ視線を遣れば、ローズ嬢とトムソンは少し話していたようだけど、しばらくして2人でダンスフロアへ出て踊り始めた。

(やった!アスター王子の指輪が効いたんだね)

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