【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
なんだろう?
なんだか無性に、アスター王子に近づいてみたくなった。
ちょっとはしたないかな、と思うけれども。自分の素直な気持ちを表したくて、アスター王子のそばに歩み寄る。
そして、手を伸ばして彼の手のひらに触れてみた。
ずっと剣を握ってきた手のひらは傷だらけで皮も厚く、節くれだち、普通の男性よりもゴツい。
でも、苦労を知るその手が、わたしは好きだ。
両手でアスター王子の手のひらをそっと包み込むように触れると、案の定彼はすぐさまギシッと固まる。
「はしたないかもしれませんが……今、あなたに触れてみたくなりました。やっぱりあなたが好きだなって……それが今のわたしの素直な気持ちです」
わたしがそう話すと、アスター王子の顔が見る間に染まる。数秒間フリーズした後……ぎこちない動きでわたしの背中に手を回すと、そっと抱き寄せられた。
強引さはまったくなく、恐る恐る……という表現がぴったりな繊細な動き。
今までだったら、拒否してた。
でも、今は。素直に彼に委ねてみたいと思う。
抱き寄せられて、彼と身体が触れるけれども…嫌じゃない。そのたくましさを感じて安心感を抱く。
ドキドキと少し鼓動が速くなって、触れた場所からぬくもりが伝わる。わたしの手のひらをぎゅっと強く握りしめられて、アスター王子の想いの強さを感じる。
彼の存在を感じて……ぬるいおくるみに包みこまれるような、酔ったような。ふんわりした不思議な感覚。
(そっか……これが、恋人とのしあわせ……なんだ)
やっと、わたしも自覚することができた。