【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

アスター王子の顔に浮かんでいるのは、深い深い悔恨の情。悔やんでも悔やみきれない、昔の……いや、きっと彼にとっては“今”ても、後悔に苛まれている罪悪感。
こうしてわたしに話したのは、わたしの無謀さを諌めるためでもあるのだろう。

でも……

わたしは、嬉しかった。

きっと、彼のなかでずっと胸の奥底に仕舞い込み、燻り続けていた感情。今の今まできっと御母上様にも話したことがない懺悔のような吐露をしたのは、“わたし”相手だから。

ミリュエール・フォン・エストアール。わたし自身だから信頼し、心を許してそこまで話して下さった…その事実が。

わたしはアスター王子の手のひらに、そっと自分の手を重ねる。うつむき加減だった彼の顔が少し上げられてわたしを見た時に、にっこりと笑って見せた。

「アスター王子、大丈夫です。もしもあなたが罪を犯したならば、わたしもともに背負い償います。だから、一人で苦しむ必要はありません」

キッパリと、彼に言い切ってみせた。

「その時どんな状況だったのかは直に見ていたわけではありませんから、無責任なことは言えませんけど……少なくとも、わたしはあなたが生きていて下さった。そのことが嬉しいし、神に感謝したいです」


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