【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

確かに大切な仲間や友人を亡くしたら悲しいし、罪悪感に苛まれるだろう。わたしだって絶対そうだ。フランクスやトムソンやピッツァさん等……絶対亡くしたくない人ばかりだ。

彼らはこれから騎士になる未来があり、婚約者も決まっている。無限の未来が待っているんだ。それぞれ皆人生があり、命があり、生きていく。

それが、敵の理不尽な攻撃で、目の前で一瞬にして奪われてしまったら……。

もしもを想像しただけで、心臓が締め付けられるような息苦しさを感じた。きっと、現実はもっと過酷な経験だろう。アスター王子はそんな思いを数え切れないほどしてきたんだ。

ぎゅっとアスター王子の手を握りしめた。感情が高ぶったからか、冷たくなった彼の手に、どうか、わたしのぬくもりが伝わりますように……と。

「……ミリィ」

アスター王子の声はわずかにかすれていて、少しだけ弱々しい。

だけど…

「……ありがとう」

彼は小さな声でそう言って、わたしの手を両手で握りしめて下さった。冷たかった手のひらに少しずつ少しずつぬくもりが戻っていく。

アスター王子のトラウマとも言える、仲間の喪失。その深い傷は容易には癒せないだろう。

だから、わたしは黙って彼に伝え続ける。今はわたしがいるのだ、と。

昔は変えられない、だけど…未来(さき)はわからないぶん、自分次第なのだ…と。

(わたしが、アスター王子を護ってみせますから)

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