【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

走り込んで一心に呪いの人形を目指し、短剣を振るう。
おそらくわたし自身だけならば、アスター王子のメダリオンとブラックドラゴンの短剣で護られるだろう。
でも、レスター王子はなにも身につけていない。
呪いの人形に襲われる前に、倒さねば!

「おお、愛しのミリュエール!ようやく素直になってボクの胸に飛び込…ぐえっ!」
「失礼します!」

こんな状況なのに相も変わらず寝言をほざくレスター王子を、思いっきり突き飛ばす。説明したところで理解しないだろうし、説明する時間が惜しい。
まぁ、少し吹っ飛んだ程度で死にはしないでしょう。

それより、呪いの人形に攻撃されたり取り憑かれる方が数倍厄介だ。

「危険なのでわたしの後ろに回っていてください!」

念のためにレスター王子にそう忠告しておくと、何を考えたかとんでもない事をしてくれた。

「はっ!」

次々と湧いて出る呪いの人形を短剣で斬り捨てていると、いきなり後ろから抱きしめられた。

「うげっ…ちょ、レスター王子!なにをされているんですか!?」
「愛しいハニー。ボクはすべてわかっているよ?キミが素直になれないのは、ボクを愛しすぎているからなんだと…アスターと婚約したふりをしたのも、ボクに焼きもちを焼かせたいからだろう…かわいいハニー」
「は?この状況でなに頭湧いたことおっしゃるんですか!?そもそも、最初からあなたのこと好きになった事なんてありませんけど?」
「照れなくていいんだよ!ボクはわかってるから……ぐぇ」

駄目だこりゃ、と判断したわたしは、とっさにアホ王子のみぞおちにひじ鉄を喰らわしてやったら、ようやく離れてくれた。


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