捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
反撃


息が、苦しい。呼吸ができない。

絶え間なく流れ出す血で、体温が下がっていく。

もはや視界が暗くなり、手足の感覚が鈍くなっている。

でも……

それでも、わたしは。

朦朧とする意識のなかで、はっきりと確かに思った。


「わ……たしは……騎士だ……騎士なんだ。ゼイレームを護る……エストアールの娘なんだ」

呪術師とエストアール家、ゼイレームになにがあったかは知らない。

だけど、今。こいつは敵。


明らかに、ゼイレームを攻撃している。

ならば、わたしは戦わねばならない。

まずは、囚われたレスター王子を助けねば……
そう思うのに、身体が動かない。

今にも潰れそうな圧力はますます強くなり、抗えない。

(身体を動かせ……!呼吸をしっかりと……負けるな……!!)
 
おそらくブラックドラゴンからの支援は、呪術師により遮断されたんだろう。会話が不可能になり魔力も感じなくなった。

そして、大量に侵入した魔獣兵により、他の人たちはその対応に手一杯でこちらへ手を貸す余力はない。

ならば、わたしがこの呪術師を倒さねばならない。


おそらく国境への侵入はあくまで囮でそちらへ戦力を割かせておき、本当の目的は王宮への襲撃。それは事前にわかっていたから、万全を期していたけど……呪術師はそれ以上の圧倒的な力を有していた。

200年…ずっと狙いを定めて。


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